本事業について
公費解体の期限が迫る中、修繕可能な建物も含めて解体が進むことで、住環境の再生だけでなく地域の景観・文化・経済・コミュニティの衰退が懸念される状況に対し、建築士など建築に関わる専門家の知見に基づく具体的な選択肢の提示が求められていました。
本事業では「直して残す」をテーマに、3つの事業を柱として、被災建物の修繕・再利用を支援し、住まいと地域の再生を持続的な復興へとつなぐ基盤づくりに取り組みました。
本事業は、休眠預金等活用事業(2024年度 物価高騰及び子育て対応支援枠/資金配布団体:一般社団法人居住支援全国ネットワーク)として実施されています。
私たちの活動について
建物相談|相談会79回開催 相談件数358件
震災後、住宅に関する不安や悩みは依然として大きく、建物相談には当初の想定を上回る相談が寄せられました。
本事業では、2025年3月から9月 にかけて、79回の相談会を開催し、358件の相談 に対応しました(本事業263件、市町事業295件、合計558件)。
相談内容は、修繕と解体の判断、修繕費用の目安、罹災証明の判定、制度や補助金の活用など、多岐にわたります。
必要に応じて建築士が現地調査を行い、建物の状態を確認した上で、専門的な視点から状況を整理し、相談者が次の一歩を考えるための判断材料を提示してきました。
主な相談内容
- 修繕と解体のどちらを選ぶべきか判断に迷う
- 家が傾いている気がするが危険性を知りたい
- 公費解体の対象になるのか確認したい
- 罹災証明の判定が妥当かどうか不安
- 再建までに何を準備すれば良いか知りたい

相談の満足度調査では、「非常に満足」61.9%、「満足」31.8% と、9割以上が「満足」と回答しています。
相談者の感想
- 専門家の意見を聞いて安心した
- 役立つ情報や新しい発見があった
- 具体的な提案があり見通しがたった
- 自分の考えやすべきことが整理できた
- 地域の風景を守る重要性を再認識した

建物相談は、単に被害状況を確認し、制度や修繕の情報を伝えるための場ではありません。 家を失うかもしれない不安、判断できないまま時間だけが過ぎていく焦り── そうした“暮らしの土台が揺らぐ瞬間”に寄り添い、相談者がもう一度、自分の暮らしを見つめ直し、次の一歩を踏み出すための支えとなるプロセスです。
アンケートでは 9 割以上が「満足」と回答し、「不安が軽くなった」「動き出すきっかけになった」という声が多く寄せられました。これは、専門的知見に基づく判断だけでなく、相談者に寄り添いながら“共に意思決定する”姿勢が、確かな安心につながった結果だといえます。能登の復興は、これから長い時間をかけて続いていきます。建物相談は、その最初のステップとして、これからも地域の暮らしと未来を支えていく重要な取り組みです。


住宅資源調査|珠洲市、能登町、輪島市 4,467棟調査
第一回(能登町、輪島市)、第二回(珠洲市、輪島市)と、対象建物の外観状況を悉皆調査し、建築的価値や再利用可能性を評価する記録を作成・整理しました。調査データは写真や位置情報と統一的に整理し、地図へのマッピングを行いながら、建築資源を抽出するための分析を進めています。
また調査結果については、地域の住民や関係者が次のステップを検討するための材料となるよう、今後の活用を見据えて内容の整理・共有を行っています。さらに、第三回(穴水町、輪島市の残り)、第四回(志賀町、七尾市)の調査も実施予定です。

調査方法
- 調査員は2人1組でチーム編成
- 外観を調査、ipadで調査票入力
- iPadで写真撮影
- ipadで調査票と地図を連動し正確な位置情報を入力


調査結果の整理分析
- 調査結果をもとに建物を評価
- 「とても価値がある/価値がある」を色分けし地図上に可視化
- 地区ごとの割合を算出し重点区域を抽出
- 重要建物のプロット図を作成し 地域の特徴と重ね合わせ

被災していても、建築的・地域的に価値が高く、活用の可能性がある住宅が各地に確認されました。価値のある住宅は点在しているだけでなく、集落や地区としてまとまって残っている場所もあることが分かりました。 このことから、住宅資源は個別の建物にとどまらず、地域単位で次の復興のあり方を考えるための重要な手がかりになることが明らかになりました。
のとボイス|第2回、第3回を開催 延べ185人参加
復興に関わる多様な主体が課題を共有する場として、のとボイスを年2回開催しました。テーマ設定や登壇者の選定を工夫し、行政・専門家・支援団体・地域の実務者など幅広い参加者を得ることができました。
これにより、地域ごとの状況を踏まえた対話の場を継続的に提供し、復興に向けた論点整理や協働のきっかけが生まれる機能を果たしました。また、建物相談や住宅資源調査の取り組みを共有することで、事業全体の理解促進にも寄与しました。
第2回 のとボイス
被災家屋の再生と七尾湾沿岸復興
日時:2025年4月12日(土)
会場:七尾商工会議所
参加者数:72名
第3回 のとボイス
復興の次の一手を考える
日時:2025年7月27日(日)
会場:金沢21世紀美術館
参加者数:113名
住民の声をもとに現地の課題を整理し、専門家と行政が課題を共有することで、 新たな制度や支援策の具体化につながりました。また、対話を通じて多様な立場の人々が関係を築き、支援の輪が県外にも広がっています。継続開催を重ねる中で、「のとボイス」は復興を語り、次の一手を考える開かれたプラットフォームとして定着しました。
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終わりに
わたしたちは、建築士としての専門的知見を活かし、被災者一人ひとりが納得して住まいの再建を選べるよう、判断材料を整理し、寄り添う支援を続けてきました。
これからも、住まいを起点に、地域の風景や暮らしが持続的に再生していくことを目指して取り組んでいきます。

